DevLog

衣食住でぜんぶ並べてみた——いま僕が作っているもの、そして最近セキュリティに目がいく理由

並行で動かしているプロジェクトが多くなってきたので、衣食住で棚卸ししてみた。流す・積む・渡すの3軸で繋がっていることに気づいて、特に「渡す」を本気でやろうとするとセキュリティが必須になる、という話。

#portfolio #security #bim.house #soluna #mu #jiuflow #koe #kagi #succession

並行で動かしているプロジェクトが多くて、自分でも俯瞰しないと見失うようになってきた。今日は棚卸しを兼ねて、衣食住という一番古典的な枠で並べてみる。そのあと、衣食住に入りきらない知・動・働の枠を足して、最後に最近やたらと時間を吸われているセキュリティの話を書く。

書き出してから気づいたが、これは並べてみると一本に繋がっていた。バラバラに作っているつもりが、自分の中では同じ一つのものを別の角度から触っていただけだった。

  • MU(wearmu.com) — アパレルEC。100日に一度、創業者が次の創業者にトロフィー(MA)を贈与する「Founder Relay」を回している。連鎖7人目まで決まっている。
  • /sweep(MU × SIIIEEP collab) — 北参道のBJJウェアブランドとの協業。13商品をPrintfulで自動fulfillしながら、共同企画ラインを足している。
  • MU Collab B2B — 法人向けの白タグサービス。初年度の基本料は¥0で、レベニューシェアだけ取る(30/20/10%)。

衣はもともと自分がプロダクトとして触ってこなかった領域だ。だからこそ「服を売る」というより「着る人の関係性を売る」というところに振れている。Founder Relayもcollabも、結局は「誰から渡されたか」を残す装置として作っている。

  • 焼肉古今(kokon.tokyo) — 経営に参画している焼肉店。

食は一店舗だけ。ここは増やすつもりはなくて、業態の中で「速く・ノイズなく食べられる体験」をどう作るかの実験場として持っている。配膳・予約・会計の摩擦をどこまで削れるか。

ここが一番厚い。

  • SOLUNA / TAPKOP — 弟子屈町で進めている小屋・別荘プロジェクト。East Venturesから優先株10%で5,000万円の出資を受けている。SIPs建材(杉CLT+籾殻+竹)の開発を建材メーカーと並行で進めている。
  • bim.house — 建築データ(BIM)と確認申請を、100年後にも読める形で保存・継承する仕組み。表に出していない裏のテーマがあって、それは後ろのほうで書く。
  • Instant House A/B — Beds24に紐づけた物件運用。
  • StayFlow — 宿の管理SaaS。500施設以上、月間1,860 UV。
  • BANTO — 宿向けの番頭代行。
  • KAGI — スマートホーム鍵管理のiOS / Mac Catalystアプリ。Philips Hueなどのリモート操作を1画面に集めている。
  • Koe Device(koe.live) — ESP32-S3で作った28mm丸基板の音声デバイス。BOM $24。家でも、フェスでも「一つの空間に音と声を流す」ための物理基盤。
  • SOLUNA FEST HAWAII 2026 — Koe DeviceとSOLUNAの世界観を一週間滞在型で味わうフェス。

住の領域では「作る → 運用する → 引き継ぐ」の3段全部に手を入れている。建てて売って終わり、運用して終わり、ではなく、継承可能な状態で残すところまで含めて住だと思っている。これがあとで効いてくる。

衣食住に入りきらないもの

ここまでで自分のプロダクトの半分くらいしか並ばないので、足りない枠を補う。

知 — 「考える」「伝える」を速く、ノイズなく

  • chatweb.ai / teai.io — Fly.io上の自前AIチャット。Lambdaはもう削除済み。
  • Elio — iOSのAIアプリ。P2P推論も組み込んでいる。
  • ミセバンAI — 飲食店オペレーションの番頭AI。
  • OpenClaw — 4台のVPSで自律的に動いているAIエージェント群(Hachi / Kuro / Ichi / Ni)。Telegram経由で会話する。
  • Trio — macOSのAIメッセージアシスタント。LINEを画面OCR経由で読み書きする。
  • Deru AI — 050番号付きの音声AI。Telnyx番号申請中。
  • Koe(入力アプリ) — macOS / Windows / ブラウザの音声入力。

動 — 身体性

  • JiuFlow — 柔術の道場・大会・技術プラットフォーム。iOSアプリとSSR Webサイト。
  • JF認定 / SJJJF公益法人化 — 道場・指導者・大会の三層認定スキームと、公益法人化の準備。

働 — お金と契約の摩擦を消す

  • パシャ — レシートOCR経費管理。
  • サクッ — 個人事業主の確定申告。
  • チャリン — 収入・請求書管理。
  • ポン — 電子契約・署名。
  • enablerdao.com — 会社のコーポレートサイト+ENAIトークン購入導線。

1個の線でつなげる

並べてみて、自分でもバラバラに見える。衣・食・住・知・動・働。業種だけで括ると一貫性がない。

でも動詞で並べ直すと、全部同じ3つのことしかやっていない。

1. 流す(Flow)

入出力の摩擦をゼロに近づける。音声でも動画でもテキストでも、操作でも会計でも契約でも、間にあるノイズを削る。これは僕のプロダクト全体に通じる設計哲学で、自分の中では「世の中の摂理」として扱っている。

  • chatweb.ai / Elio / Koe / Trio / Deru — モダリティを問わない入出力
  • Soluna(soluna://プロトコル) — AirPlayのように設定なしで繋がる
  • パシャ / サクッ / チャリン / ポン — バックオフィスの摩擦を消す

2. 積む(Stack)

個人の意思や活動が、消えずに次の時代に残る形にする。

  • bim.house — 建築は時代の意思の最も永続的な記録
  • SOLUNA / TAPKOP — SIPs建材で100年単位の家
  • ENAI Token — トランザクションを不可逆に積む
  • JF認定・SJJJF公益法人化 — 個人の技を制度に変える

3. 渡す(Pass)

積んだものを、次の人に安全に、確実に渡す。これが最後の動詞で、いま一番時間を使っている。

  • MU Founder Relay — 100日ごとにMAを次の創業者へ
  • JF認定 — 道場と技を世代に渡す形にする
  • bim.house — 施主から相続人へ建物データと鍵を渡す
  • SOLUNA書類Vault — 物件を相続人に確実に渡す

経歴を後ろから振り返っても同じだ。Mercariは個人間の売買を流通インフラに変えた仕事だった(流す+積む)。NOT A HOTELは個人所有を継承可能な資産に変えた仕事だった(積む+渡す)。今やっているのは、その2つを完全に重ねた領域だ。

最近セキュリティに目がいく理由

ここから本題。

「渡す」を本気で考え始めると、セキュリティが必ず最後の壁になる。これに気づいてから、しばらくセキュリティの本ばかり読んでいる。

理由は単純で、「渡す」が成立するためには3つ全部が要るからだ。

1. 渡される側が、渡される対象を本物だと確認できる(完全性) 2. 渡される側だけが鍵を持てる(機密性) 3. 渡す側が消えても、渡せる(可用性 + 継承)

これがそのまま情報セキュリティの C-I-A 三要素なんだけど、面白いのは、これがソフトウェアだけの話じゃないということだ。

  • bim.house の建築データ — 100年残るためには、改ざんされていないことを次の世代が確認できる必要がある。content-addressedハッシュとappend-onlyログが要る。
  • SOLUNA物件の権利書 — 紛失・改ざん耐性のある書類Vault。
  • MU Founder Relayのトロフィー — 「誰から誰へ渡されたか」が偽造できないこと。チェーン的な署名構造が要る。
  • JF認定 — 認定証が偽造されたら制度が崩れる。
  • KAGI — 物理的な鍵そのもの。家の鍵をスマホに置く以上、鍵管理がそのままプロダクトの中心になる。
  • Koe Device / SOLUNA音声 — フェスや家に物理デバイスを置くということは、そこにマイクとスピーカーがあるということだ。プライバシーと暗号化されたチャネルが要る。
  • Deru AI / OpenClaw — 自律エージェントが鍵やトークンを扱うようになると、agent の権限管理が新しい攻撃面になる。

つまり僕が「渡す」を含むプロダクトを並列で動かし始めた瞬間、セキュリティが必須科目になった。スキルとして突然興味が湧いたのではなく、自分のポートフォリオが要求してきている。

もう一つの追い風

加えて、攻撃側のコストが下がった。

4月にAnthropicのMythosというモデルがリークされた話を書いた。要点だけ言うと、初回試行で83%の確率でエクスプロイトを書ける時代に入っている。僕のような個人開発者が自分で書いたコードを、攻撃側のAIが秒で読むようになった。

防御側の僕も、当然AIを使う。だけど、防御は「全部正しい」が要件で、攻撃は「一箇所抜ければ勝ち」が要件だ。非対称性は変わらない。これに対処するには、

  • 設計段階から脅威モデルを書く(あとから足すと穴が残る)
  • append-only と content-addressed をデータ層の既定にする(事後検知が可能になる)
  • 鍵を物理に分散する(秘密鍵がクラウドだけにある状態をやめる)
  • agent に渡す権限を最小化する(OpenClawが家の鍵を引けないようにする)

このあたりを、今ある全プロダクトに横ぐしで入れていくフェーズだと思っている。

これから

衣食住 + 知・動・働で14個くらい数えたけれど、これからは数を増やすつもりはあまりない。この14個を、流す → 積む → 渡す の3軸で完成させ、特に「渡す」をセキュリティ込みで完全に作る、というのが今年の残りでやることだ。

bim.houseの裏テーマは、表に出していないんだけれど、「時代の意思を永遠に残し、安全に引き継がせる」だ。これが書ける装置を、衣の領域でも食の領域でも、自分の身体(柔術)でも、会社(Enabler)でも、家(SOLUNA)でも作っている。

セキュリティはその全部の床下にある配筋だ。表には出ない。でもそこが弱いと、上に建てた全部が崩れる。だから、しばらくは床下を強くする時間に使う。

---

棚卸しを書いてみてよかった。同じ動詞を3つやっているだけだとわかると、次に手を入れるべき場所が明確になる。「渡す × セキュリティ」の象限が、いま自分のポートフォリオで一番手薄で、一番伸びる。

---

Originally posted on yukihamada.jp.